第六話 「最終的に行き着く場所へ」

窓から光が差す。

まだ風は冷たいけれど、太陽の光が暑いくらいで、もう春がやってきた。
あっという間に桜は満開で、お花見もできぬままで、今日こそはと、外に出る決心をする。

でも一人は寂しいな。。。。
よし、おうちの子を連れて行こうかな、

「木の葉猿」

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熊本県玉名

奥の大きな子から順に、
馬乗り猿、飯食い猿、団子猿 大、団子猿 小

型を使わずに指先で粘土をひねって作る、素焼きのままの素朴な郷土玩具。
みんな違ってみんないいのよ。
もともとは無彩色だったようで、無彩も味があってとってもいいです。

なんだか、宴っぽいぞ!と自己満足なキョウイチは、木の葉猿ちゃん達を引き連れ、大濠公園へ向ったのでありました。

満開の桜並木道を颯爽と自転車で走り去る。

アヒルボートがぷかぷかと浮かんでいる。

僕には特等席があって、公園へ行くと必ずそこに腰をかける。
場所は教えないけどね!へへ。

その場所へ着くと、すでに誰かが座っていた。

立ち去ろうかなと、思ったが、近づいて、

「そこ、僕の席だよ、アキちゃん!」

「え、キョウイチくん!何しようと?!」

「はなみー。アキちゃんこそ!」

「はなみー!はははー。大濠公園が好きすぎて。何も用がなくても、何もすることがなくても、最終的にここに来ちゃうよ。」

「うん、分かるね。山響屋もそんな感じじゃない?!」

「あ、うん、分かるかも!」

「おにぎり食べていい?買ってきた。いる?」

「食べて食べて、私は大丈夫。」

キョウイチは、おにぎりと木の葉猿をリュックから出した。

「あ、木の葉猿だ!」

「お!勉強した?!」

「少しだけ。。。!可愛い!」

ぴゅーひょろろ。ぴゅーひょろろ。

ふたりは鳶が上空を旋回しているのをしばらく見ていた。

「アキちゃんこの後は?」

「特に何もないですよ、私も木の葉猿欲しいなー、」

「おし、行こっか、山響屋。」

「そだねー!」

「どうもー。」

「きたね。」

にやける瀬川氏。

「こんにちは。」

「あれ?アキちゃんも!何しよったん!?」

「偶然会って、はなみを!ね、アキちゃん。」

「よかねー、綺麗かったろ?」

「そりゃもう!」

「私が木の葉猿欲しいって言ったら、ついてきてくれました!」

「てか、あなた達、何か気づかない!?」

2人は店内を見回す。

2人同時に、「あ!」

ドーーーン!

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「鯉のぼり〜!」

「だーれも気づいてくれんっちゃん。。。」

しょんぼりな瀬川氏。

「めっちゃすごいじゃないですか!かっこいい!」とキョウイチ。

「わー!こんな間近でみれるの、なかなかないから嬉しいなー!」とアキ。

「よかったー、そう言ってもらえて!」

ほっとする瀬川氏。

「僕ちょっとこのパンダとウシ気になってたんですよねー。」

「パンダとウシの面」

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岡山県倉敷、道楽かん工房

可愛い表情がなんとも言えないね。
愛くるしいとはこういうことなのかな。

「キョウイチくん、ちょっとつけてみて!?」

「いや、顔はみ出るわ!はははー!」

「めっちゃ仲良いやん、あなた達!あ、この間、僕を置いてけぼりにして、カレー食べに行ったからか!」

羨ましがる瀬川氏は、
そんな二人を見て、なんだか嬉しいのでした。

つづく