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第四話 「春の気配」

今日の天気は晴れ。
風は冷たいけど、太陽がポカポカしてね、春の気配。

看板を出して、暖簾をかけて、
今日も1日が始まります。

あかりをつけましょ、ぼんぼりに〜♪
お花をあげましょ、桃の花〜♪

この時期になるとついつい口ずさんでしまうね。

3月3日はひな祭り

みなさん、現在、山響屋では
「おひなまつり」開催中ですよ!
3月3日までだってよ!
ようこそ、ようこそ、いらっしゃい。

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さ!仕事をするかね。

今日はBGMなにかけようかな〜。。。

ストーブをつけて、お香を焚いて、郷土玩具ちゃん達に朝のご挨拶。

するとそこへ、お客様が。

「こんにちは。」
「こんにちは、お久しぶりですね。」

そういうと彼女は少し照れくさそうに笑った。
お店来てくれたのは2回目かな?
初めて来てくれた時は、結構じっくり見て、郷土玩具のこといろいろ聞いてくれたなー。

「あの、今日はこれをお友達にプレゼントしたくて。友達、お寿司が好きで。」

「おりがみばっぢ」

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UNIQUE,NEW,ORIGINAL,

マブく、カヴく、ハイカラ。
をコンセプトに、「和洋折衷」なファッションを作っている、2人組。
折り鶴のピアスとかもあるんです。
とっても可愛くて、かっこいい!
個性的なお二人は優しくて、素敵!

「それとこれを自分用に。前にきた時、可愛いなーと思って。欲しかったんです!」

「スズメ」

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佐賀県神崎、尾崎人形

触り心地がとても気持ちよくって、目がとても愛らしい。
守ってあげたくなるね。

「これとこれ、ください!」
そう言いながら、とびっきりの笑顔で大事そうに手に抱えて持ってきた。それを見てなんだか嬉しくなった。

「よかチョイスですね!可愛いですよね!ありがとうございます。別々に包装しますね!お姉さん、時間は大丈夫ですか?」

「?はい。今日は休みなので、時間はいっぱいあります。」

「よかったです。お姉さん、お名前は?」
「アキです。」
「アキちゃん!よろしくお願いします!」
「よ…よろしくお願いします。あの、お店の名前は?」
「ヤマビコヤです!」
「ありがとうございます。ずっと読めなくて、はははは」

(カキカキ、ピュッピュ、シューシュー、、、)

「郷土玩具とかはいろいろ持ってるんですか?」
「いや、全く持っていなくて。この前お店に来て、見たことあるやつとかも全然知らない郷土玩具がいっぱいあって、面白いなーって。興味を持ちました!」

「あ、ほんと?!それはよかったー!!お待たせしましたー!ひなまつりなんで!」

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「わーすごい!!かわいいですね!お兄さん、絵も書くんですか?」

「ちょっと、描きます」
照れ笑い。。。

すると、そこへ、、、。

「どうもー。」

「きたね。」

つづく

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第三話 「プラス」

「キョウイチくん、さっきさー、ストーブで焼き芋焼いたら美味しかったよ。食べる?」

「食べる!」

このいつもの感じがたまらなくいいんだよなー。
そう思いながら、店内をうろつく。

来るたびに、毎回ディスプレイが変わっているから楽しい。
瀬川氏の配置センスが良すぎる。

360度、郷土玩具に囲まれて。

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「わっ!!新しいの増えてますね。」

「そうそう、のごみ人形やろ!入ってきたとよ。可愛かろ!?」

「のごみ人形」

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佐賀県鹿島

こちらは七福神。
恵比寿様がいらっしゃらないのは、お気になさらず。
優しい顔つきと丸っこいフォルムが、ぬくもりを感じるね。
のごみ人形のはじまりは、昭和20年だそうです。

と、またも面白そうな子を発見!

「団子喰い」

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熊本県熊本

もうね、可愛すぎ。
後ろの紐をひっぱると、、、
何度もやってしまうよ。
素晴らしい!
この楽しさをみんなに知ってもらいたいよ。

団子喰いで遊んでいると、お腹が空いてきたなー。
と、いいタイミングで焼き芋のあまーい香りが!

「キョウイチくん食べよー!」
「どう?うまい?」
「あまい!うまい!」
「キョウイチくんって、甘い物好き?僕は好きだけど。」
「見るからに好きそうですね笑。僕も好きですよ。」
「バレンタインは?もらった?キョウイチくん彼女いたっけ?」
「今年もゼロ個です。今年も。母にもらうので、充分ですよ。彼女ですか?そりゃもういっぱいいますよ。郷土玩具ちゃん達が、、、。」

「おつかれっすー。」
「おお!エドくん!おつかれ!」

やって来たのは、常連のエカキ。

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「あ、紹介するね、エドくん!」
「どうも、エドコミックです。絵書いてます、こんな感じで!」

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「うわさの!」
「で、キョウイチくん!」
「あ、うわさの!」

此処にいると、いろんな人と出会える。
素敵な人が集まってくるお店。
山響屋。
此処にはプラスしかない。

そうして、あっと言う間に21時に。お店も閉店。

「よっしゃ、お疲れさま!寒いし、おでんでも食べ行こうー!」

今日も良か1日でした。

つづく

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第二話 「僕の休日」

あーよく寝たなー。
時計を見ると、午後の1時になろうとしていた。

昨晩は少し飲みすぎたかな。
記憶が曖昧だな。

寒さで布団から出るのにさえ苦労する季節に、少しだけ憂鬱になる。

意を決して、100キロくらいあるだろう、重い布団を剥ぎ取って、キッチンへ向かう。

水で喉を潤し、
さてと今日は何をしようかと考える。

ふと横を見ると、僕を見ている可愛い子たちと目が合う。

「彦一こま」

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熊本県八代

4つのコマが、たぬきの中に混ざっているの。
あなたは見つけられるかな?
八代の彦一とんち話をヒントに昭和25年頃から作られています。
暇な時はひとりコマ大会だよ。

「きじ馬」

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熊本県人吉

左から六号、五号、四号の大きさ。
かつては子どもが乗って遊べるくらいの大きさもあったとか。
木のタイヤに温もりを感じるね。
創案したのは平家の落ち武者だとか。

そろそろ準備でもしようかと、予定は決まらないままだが、とりあえず出かけることにした。

今日はいい天気だし、自転車でサイクリングかな。

外にでると、寒さでやっぱり家にいようかと一瞬思ったが、せっかくだしと、思いっきり自転車を走らせた。

次第に体もあったまってきて、行きつけの珈琲屋さんで一息。

こっから近いしなー、今日も行くか。

と、週2のペースで入り浸るお店へ向かうことにした。

自転車を走らせている途中、曲がり角で女性とぶつかりそうになった。
すごいニヤニヤしてたな、いいことでもあったんだろうか。
なぜだか羨ましいなと思ってしまった。

その角を曲がると、白い看板に黒い文字がどーんと見える。
お葬式のような看板が目印。
いずれ、もっとカッコ良くなるらしいよ。。。

暖簾をくぐって、
「どうもー。」と入って行くのが恒例。

すると、「きたね。」と必ず返してくる店主の瀬川氏。

「キョウイチくん、さっきさー……」

と、お店が終わる21時くらいまでいろんなあらゆる事の話をして、僕の変わらないいつもの幸せな休日が終わっていくのです。

つづく

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第一話 「心の中はハイテンション」

ある日、天神をぶらぶらと。
今泉にある古めのアパートの入り口に心惹かれる。
雰囲気のある小さな木の看板に目をやると、「民芸品と郷土玩具」「やまさコーポ101」とだけ描かれていて、お店の名前はまだよくわからないけれど、そのアパートに足を踏み入れてみることにした。

だいたいアパートやマンションの101号室は1階の角部屋。
ということで、すぐにお店の玄関を発見。

暖簾をくぐると、そこはもう別世界。

可愛くて素敵な子達の魅力にトキメク。

感情はあまり表に出さないけれど、心の中はハイテンション。

とても笑顔が素敵な男性店員さんがひとり。
店内はいい感じの音楽とお香と、キシキシとなる床。
懐かしくなって、おじいちゃんの家みたい。居心地がいいな。

「こんにちは」と店員さんが話しかけてきたが、人見知りの私は頭を少し下げ、「こ、ん、にちは」と自分でも聞き取れないくらいの声で答えた。

今年の干支が申だからか、申の張子や人形がいっぱいある。

「扇子申」

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岡山県倉敷、道楽かん工房

約20センチくらいの大きさで、手に持ってみると、とても軽い。肌触りがとても気持ち良くてぬくもりを感じる。ようこそようこそ。可愛いなー。

「さる面」

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兵庫県須磨、須磨張子

みんな違ってみんないいなー。
愛らしい顔付きで、みんなと目が合うからなんだか照れてしまうよ。緑のアイシャドーがポイントだね。

「寒水のガラガラ」

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佐賀県神崎、佐賀一品堂

土鈴で優しい音色。
鮮やかな赤色がとてもいいね。顔つきがみんな個性があって、可愛いなー。一度は作られなくなってしまったそう。けれど郷土玩具収集家の方が持っておられた人形を元に復元したそうですよ!奥がとても深いのです。

店員さんが丁寧にいろんな事を教えてくれ、あっという間に気がつけば時間が経っていて、まだお店の半分も見てないけれど、次の楽しみにとっておこうか。

また頭を少し下げ、

「ありがとうございました。またあした。」

そう言ってお店を出た。

しかし、お兄さんどこ出身だろうなー。。。
すごいなまってたなー。。。
あの子可愛いかったなー。。。

と帰り道はお店の事で頭がいっぱいで、ニヤニヤしていたら、自転車に乗った男の人とぶつかりそうになった。

ニヤニヤしてたのみられたかな。
あぁ恥ずかしい。

けれど家に帰りつくまで終始ニヤニヤしていた「アキ」でした。

つづく